■有栖川有栖さん作品
有栖川有栖デビュー作。学生アリスシリーズ1作目。私にとってもいちばん最初に読んだ有栖川作品です。ミステリーとしてビックリしたとかそういうのは全然ないんですが(もともと驚きが目的ではない作品だし)、すごく好きです。アリスが若くてとても可愛いです。江神さんもじわじわと味の出てくる人で。ルナといい感じだなぁ…。
動機が納得いくかいかないかっていうのは…結局そのキャラクターの切実さがどれだけ出ているか、ですよね。あの状況下で語られる想いの切実さ、情景の美しさはすごくよかったし、私は十分だったんですが…ダメですか?(笑)
(2001.8.12)
学生アリス二作目。この作品からマリアが登場。名前の通り、クローズドサークルもの。でも、有栖川作品には多いことですが、そんなに登場人物たちが表面的にはヒステリックにならないのですよね(笑)。見ようによっては「殺人が起きてるのに、どうしてみんなこんな悠長なんだろう…」なんて思うぐらい(笑)。それが地味に感じる理由でもあれば、まったりと感じる理由でもあり、かつ上品に見える理由でもあるでしょうね。
初読のときは月光ゲームの青春小説の雰囲気のほうをかなり気に入っていたので、孤島パズルはそんなに印象に残らなかったんですが、なかで出てくるモアイのパズルが面白いです。それと、月光ゲームのようにむちゃくちゃに人が多いってこともない(笑)ので、「読者への挑戦」にチャレンジしてみたいっていう人にはいいのでは。私は絶対やりませんけど(笑)。
最近気付いたですけど、有栖川は、締め方がとてもいい作品が多いです。学生アリスシリーズの三作のなかでは、孤島パズルがいちばん好きな締め方ですね。去ってしまった人と、帰ってくるのを待つ人とっていう。…気障ですが(笑)。
(2002.6.8)
学生アリス三作目。有栖川の自他ともに認める現時点での代表作、ということで。私も、有栖川ではこれが一押しです。三回も挟まれる「読者への挑戦」やら、ハードカバーでは字がとっても小さかったのでずいぶん読み進むまで気付かなかったけど、とっても長大な作品だったわ(文庫は見るからに厚い)で、見るからに力作。
有栖川に対してはなぜか、こんなに好きなのに、地味だのまったりだのどうもろくなことを言わない私ですが(笑)、この作品に関しては全面的にすごい!うまい!と絶賛です。何度読み返しても面白い。実は初読時、犯人だけは最後を読む前にわかっていたのですが(わかった理由はとってもくだらない)、そんなことはなんの瑕疵にもならんですね。有栖川は「何の意味があるんですか?」って感じの気の抜けたエピソードや文章がけっこうあるんですが、この作品は全体のトーンがまとまっているせいかな。それとプロットはそうとう練りこんであったんでしょうね。そういうのも含めてキレイに集約していく感じがして、三回の挑戦に対する答えの部分が大変に気持ちよかったです。お話の構成も、全体像も、ものすごくよく考えられているし、うまいですよね〜。とにかくよく練られています。有栖川のやりたいことが、完全といっていい形でできている作品ではないでしょうか。
私は昔からこの手のパズラー(と呼ぶことは知りませんでしたが(笑))が好きな人だったのでいいんですが、一時期それまでミステリーはほとんど読んだことないけど「アリスがおいしいらしいよ」って有栖川を読み始めた女子ヲタの人ってのがけっこういましたよね?そういう人たちにとって、有栖川は面白かったのか?というのが、ずっと気になっていたりします(笑)。ちなみに、私は緻密に論理構築型のミステリーって好きですが、大技トリック型も好きでして、要は面白ければどっちでもいい…(笑)。
いままでは「ミステリアスである」という事実しかわからなかった江神さん(それってわかっているというのか?)が、一部ベールを脱いだような脱がないような。このお母さんのエピソードは想像外。この作品の江神さんは妙に好きです。そうそう。この作品、火村の原型である詩人志度晶が出てるんですよね(笑)。志度さん、いいっすね。志度さんと衝突してた八木沢さんも優等生ちゃんぽいですが、好きです。
(2002.6.8)
火村シリーズで、国名シリーズ。すでに「もはや出ることはないのではないか?」と半分諦めムードになっていた双璧の片割れ、マレー鉄道がついに出ましたですよ(ちなみにもう一冊は綾辻の「暗黒館の殺人」)。それにしてもマレー鉄道は大々的な予告があってから、やたらと長かったです。どういうこっちゃ、どうなってんねん、というぐらいに長かった。先にペルシャ猫のほうがまとまっちゃうしさー。そんな事情でしたから、あとがきの「最短で書いた」という言葉には「なんだとー!」とひっくり返りました(笑)。まぁ出たし、面白くって、有栖川ブーム到来したし、もういいんですけどね(笑)。
でも、「一気に書いた」というのはわかるような気がします。有栖川は基本的に文章は勢いのある人じゃないですけど(レトリックで読ませる方ですよね)、いつになく筆が快調っていうのが読んでてもわかるような気が。でもって火村シリーズにしてはずいぶん長い作品になってますが、全然長く感じない(これは量の意味でも、内容の意味でも)。とりあえずマレー鉄道にわざわざ取材旅行に行ったのだからとゆーことで、全体に旅情漂う作品でして、そうでなくても火村シリーズっておよそ殺人事件とは程遠い、まったりのほほんムードになりやすいシリーズなのに(火村とアリスが油断するとすぐ漫才を始めるから)、うきうきと旅行を楽しんでいた日には…ねぇ(笑)。まったりのほほんの裏に切なかったりやりきれなかったり、というものが隠れていたりするのも有栖川作品の特徴ですけど、今回はそういうモードも少なくて、のっけにいきなり重たい神さまについての会話みたいなのがありましたけども、これが浮いてるぐらい(笑)、全体に楽しげな作品でした。
アリスが、石岡君ほどではないのですが(よかった、アリスは一応会話できるレベルで)、あんまり英語は得意ではないとゆー設定でして、ところどころアリスが聞き取れなかったという設定で「彼はXXXX(聞き取り不能)していました」って感じの台詞がありました。これ、最初のうちは違和感があったんですけど、中盤辺りからこの聞き取り不能台詞がいろいろ効果的に使われてて面白いなぁと感心。
有栖川作品って目に見えてスゴイって言うのは別のところで「なんかいいのよね」と好感を持つ部分が大きいので、言葉にしにくいんですけど(いや、目に見えてスゴイ「双頭の悪魔」とかもあるんですけど)。とりあえず面白かったです。てなわけで、マレー鉄道をきっかけにいまさらながらの有栖川ブームが到来、再読と新刊に飛びついてしまったのでした…(笑)。
(2002.6.4)
追記。
「なんかいいのよね」と有栖川ブームが到来した理由をおもいつきました。ものすごく馬鹿正直などストレートの本格ミステリーとしかいいようのない作品に、その徹底した職人ぶりに「あいかわらずだなぁ、いいなあ…有栖川…」という気になったのかなという気が(笑)。いや、有栖川は決してそれ以外を書かない人ではないので、この職人ぶりはもちろん意志を持ってそうであるわけで、そこがまた「いいなあ」というところ。…それだけです。
(2002.6.8)
もともとめったにハードカバーを買わない私。もともと短編をあんまり読まない私。とゆーわけで、ハードカバー短編集のこの本は、たとえ火村シリーズでもそ知らぬふりをしてたんですが(笑)、有栖川有栖ブームが到来して新作が読みたくてしょーがなくなったので購入。でも順番を間違えたみたいです。「暗い宿」のほうが先の刊行でしたね。逆の順番で読んじゃった。
実はずいぶん前になりますけどこの前に出た短編集の「ペルシャ猫の謎」がちょっとさすがに不安だったので(短編の書き過ぎでネタが尽きてるんじゃと不遜な不安を…(^^;;)、あまり過大な期待はしてなかったんですけども、いや、もう、面白かったです。いままででいちばん好きな短編集かもしれない。この本全部好きですが、なかでも有栖川作品でいちばん好きな短編があったような気がするですよ。
○黒鳥亭殺人事件
おもしろかったです。最後のやるせなさが、またいいっす。お子ちゃまが無邪気にアリスに遊んでもらってたり、アリスと火村の旧友が出てきたり、すっかり火村シリーズののほほんムードかと思って読んでいたので、背負い投げを食らった気分。この短編集のなかでもかなり好きなお話。最後のシーン…火村とアリスが動揺してるところから含めて、好きですね。
○壷中庵殺人事件
この本のなかではいちばんぴんと来なかった(笑)。短いし、ひねりが少ないので。
○月宮殿殺人事件
ホームレスのおじさんとアリスが仲良しになってしまっているので、これまたなんだかやるせない気分。しかし、火村先生、「土蜘蛛」だとかだけ書いてファックスを送りつけるとゆーのはいくらなんでも非常識だと思うぞ(笑)。せめて名前ぐらいは入れなされ。
○雪華楼殺人事件
3人のお話がいいですね。家出してきた少年少女とおじさんとね〜。このお話も好きですね。
○紅雨荘殺人事件
お話的には雪華楼のほうが好きですが、このお話は小道具が好きですね。人形作りの真広さんとか、そういう道具立てが好き。冒頭のシーンはいったいなにがなにやらわかりませんでしたが、アリスが映画を見て泣いてるんですな(笑)。
○絶叫城殺人事件
これですよ、これ。この短編ですよ。
なにせこのタイトルが気に入らなかったんですけども(ス、スイマセン…(^^;;。表題作になっているぐらいだから気に入ってるタイトルなんでしょーけども、なにせ私は気に入らなかった…(^^;;)、お話読んだら、えらい好きな作品でした。これがいちばん好きです。有栖川作品で現在いちばん好きな短編のような気がします。
お話も最初から読ませますし、どことなく暗鬱な雰囲気もすごくよいし、全体にすごくいい作品です。でも、やっぱりこの作品のいちばん冴えているところは犯人像でしょうね。いやぁもう、あの台詞を読んだときには眩暈がしました。そしてそのあとのシーンがまたよいんですよこの犯人像とそれに中てられざるをえないラストシーンが。アリスが突然切れそうになっているところと、火村が氷のような目
をして犯人を見ているところ。アリスの表現にいわく、「冷たく、そして虚ろな目だった。」
。そんでもって、アリスは「狂おしいような心地」
になるんです。
どーにも救いのない犯人像とその毒気に中てられた救いのないラストシーンですし、このあと助教授は大丈夫だったのだろうかとかいろいろありますけど、でも好きだ〜(T_T)。素晴らしいです、有栖川先生(T_T)。これはもう、一押しです。
しかし、火村。いくら学生にいたずらされたからって、着メロ…宇多田ですか(^^;;。
(2002.6.4)
有栖川有栖の単発物です。タイトルどおり、幽霊になってしまった刑事さんのお話。映画の「ゴースト〜ニューヨークの幻」有栖川版です。作中でもしっかりこの映画の名前出てきましたけど(笑)。これが、すごくおもしろかったです。ミステリーとラブストーリー(この辺がゴースト)のバランスがすごくいい感じ。ときおり感傷を挟みつつも、基本的なトーンは、幽霊刑事とイタコ刑事コンビという軽妙なコミカルトーンで読みやすいですし。このイタコ刑事の早川君がとてもいい味を出しています。そしてミステリも、大技やこれはという論理があるわけではないんですが、キレイな伏線処理や軽いドンデンが繰り返されて、面白い。個人的には、コテコテのミステリファンとか有栖川ファンとかよりもフツーの人に読ませたい感じです。有栖川っていつのまにか地力をつけたなぁって気がしますねぇ。安定感がすごく増しているような気がします。それにいつのまにかすごく間口が広がったなぁとも思うし。彼の最近の作品は当たりが多くてすごく嬉しい。
しかしひとつだけ難をあげると…このタイトルはいただけません(笑)。絶叫城に続いて、タイトルで印象を損している感じがするなぁ。ラブストーリー方面もかなりいい感じなので、こんな無骨なタイトルじゃないほうがよかったと思うんだけどなぁ。
(2003.5.13)