■ HOME ■

JUNK LIPS

FreeTalk

■books

綾辻行人「十角館の殺人」

いわゆる新本格ミステリーに入ったのはかれこれ8年ぐらい前になります。私がミステリ好きだと知った友人が安孫子武丸を教えてくれたのがいちばん最初です。と言っても、その友人はがちがちの本格って雰囲気をあまり好まない人で、綾辻のこと自体はそんなにお勧めしてはくれなかったんですが、「新本格」という流れを知った私は自然と綾辻にも手を出したという感じです。

いまもって、新本格のなかでの金字塔のように称えられているらしい作品で、私もいま単体で見れば名作だとは思うんですが、綾辻の中でベストを上げるとすると、実は私の場合十角館は入れません。

何故かというと、十角館の肝心カナメの一文を読んだ瞬間、ボケーっとしていた私は、驚き損ねてしまったからです(笑)

「あれぇ、変なの〜」とぼんやり思って、その次のページをめくった辺りで、「ああっ!!今のところ、驚かなくちゃいけなかったんじゃん!!変なの〜じゃなくて犯人がわかったところだったんじゃん!!」と後悔の雨あられでした(こういううすらボケな人がミステリを読んでるという事実が我ながら信じられません…)。

そういうわけで十角館を好む人たちがいちばんおいしい思いをしたであろう、さらに綾辻自身がいちばん気合を入れているであろう「全てがひっくり返る瞬間」を味わい損ねてしまった私は、この小説を読み返すとどこか淋しい思いをしてしまうわけです(笑)。そんな個人的な事情から私はこれは綾辻ベストには入れません。ごめんなさい…。

でも、私が綾辻を特に好む理由の一つに「道具立て」というのがあって、そういうのはどちらかというと館シリーズよりも囁きとかの変格もののほうが顕著かもしれないんですが、これでもかって感じの幽玄たる美少女とか(笑)恐るべき子供たちみたいな無邪気で怖い子どもとか、そういうやつです。竹宮恵子か萩尾望都か、みたいなイメージの道具立て。そういう雰囲気を好んでるところがあって、十角館は大学のミステリーサークルのメンバーが中心ということもあって、雰囲気がそんなに「アヤツジ!」って感じがしないよなぁと。

トリックは別に特に感心はしなくて「ま、そういうこともあるか」的にいつものパターンで流してしまったんですが、多分、この話のいちばんの主眼は私が素通りしてしまったあの一文にあるんだと思いますので、それでよいのだろうと思います。でもうっかり素通りしてしまった私には、あの実行方法は目新しいものには見えなくて、「ふーん」という感じになってしまったのは確かです(笑)。

でもそのなかで、犯人さんの思いつめた感じはよかったと思います。考え深くて、でも底に情念が渦巻いてて。綾辻の話に出てくるああいう性格の人の独白は暗くて陰鬱で(笑)、綾辻らしくて、好きです。

エラリイがけっこう人気があったとか。私はそうでもないです(笑)。哀れだとは思いますが、キャラ的に「この人は!」ってのは綾辻の話ではめったにありません。

2001.03.04