KOKO日記

「暗黒館の殺人」(ネタバレ感想)

2005.03.02(Wed)

相方が貸してくれたんで、読みましたよー。あの分量でしたが、4日ほどで読了したんじゃなかったでしょうか。特に下巻はほとんど一気読みで、お酒による頭痛を起こした状態なのに朝6時までかけてぶっ通しで読んでしまいましたが、とても面白かった。とりあえず綾辻だなあと(笑)。もちろん館シリーズなわけですが、どっちかっていうと、囁きシリーズの肌触りに近かったかなと。これでもかこれでもかと過去の蓄積やらなにやらが詰め込まれていて、そりゃもう超大作でした。

以下ネタバレしますんで、困る方は自主回避をお願いします。

まず何にビックリしたって、冒頭で河南君が死んだかと思ったとき。そこかよ(笑)。だってぇ、あのダイブシーンはねぇ…本当ビックリしたんだもん…(笑)。
上巻は全体に展開がスローペースなんですよね。どっちかっていうと、あのねっとりした空気感を出すために文章がひたすら費やされてる感じです。同じ意味で、どこに謎があるのかもそんなに明確にならない。まぁ確かに人は死んでてそこでミステリーは生じているわけですが、死んだのが召使だったり、行方不明になったのがどうでもいい世俗ズレしたおじさんらしき人だったりしてぱっとしない上に、暗黒館とあの一族自体の謎や不気味さの方がはるかに上なので、そっちに気を取られてしまう(笑)。しかも暗黒館のあの一族の謎についてはやたらと思わせぶりで、その辺はある程度方向性は推測がつくんだけども、どうにも明確にならない、という感じなもので、すべてが曖昧模糊とした空気に包まれてる感じです。

で、問題の、私がとっても興味津々だった一族の謎。これが下巻で一気に解けていく…ように見せかけて、実はひたすらひたすら玄児さんが語って語って語り倒す展開なもので、明らかになる事実自体はものすごく面白いんですが、この部分が決定的にミステリーの展開じゃないです(笑)。いわゆる推理ものとしてのミステリーの解決編は中也くんの解いた18年前の殺人だけなんだよね〜。しかも、このときは横ですでにもっと大きな謎が解かれんとしてるものですから、「いや、いまそれどころじゃないみたいよ」みたいな感じでさっくり横に置かれてしまうし(笑)。で、その横にあった大きな謎も、やっぱりさくっと簡単にお父様が自らの口で明らかにしてくださるものですから、謎が解ける瞬間のカタルシスがいまいち…(笑)。

綾辻得意の語りによる仕掛けはさすが面白かったと思います(これについては再読したらもっといろんな仕掛けに気付いて面白いと思う)。すごい荒業ですが(笑)。ただ、気付いてはいました。今回は何かあるなっていうのがかなりはっきりわかる感じですしね。河南の件は気付いてました。で、中也の正体は実はわかってなかった(笑)。だってぇ、中村青司ってあんなまっとうな人の印象じゃなかったし〜(笑)。もっと生来エキセントリックな天才肌の人かと(笑)。あと、玄児の件もおかしいなというのはあっても、具体的にはわからなかったなあ。

全体的な印象として、やはり囁きシリーズの系譜かと。とにかくミステリーとしては謎解き部分が弱いのではないでしょうかね。謎そのものが弱いって言う意味じゃなくて(というか、謎はむしろとても豊富)、謎を解く過程が弱いんだと思います。
綾辻のこの雰囲気、この空気を味わうという意味においては超大作。いわゆる幻想小説としての系譜における集大成だと思う。が、館シリーズの系譜においてはやはり時計館には及ばず…という感じかなあ。で、両者の融合と言う意味では霧越邸に及ばず…って感じです。
個人的な嗜好としては、綾辻のホラーは大好きですが、根本的にミステリー好きなので(ホラーはほんの最近読むようになったぐらいだけど、ミステリーは本当小学生時代から一貫して好きなんで、やっぱ愛好の度合いが違うんですよね)、やっぱり謎が解かれる瞬間のカタルシスをもっとも楽しみにしている面はあるので、時計館のほうが好きかな。特に館はそれを書くシリーズだと思ってるから(たとえば囁きでそれを求めてるわけじゃないわけで)、いっそうそれを楽しみにして読んでるっていう面があると思いますしね。でも、問答無用で面白かったのは確かです。それに、まだ私は一度しか読んでませんが、多分再読したらもっと味わい深く、面白くなってくると思う。そしたら、また違う感想になるだろうなと思います。私のことだから(笑)。

ちなみに、いろいろ驚きどころはあったのですが、私がいちばん目からうろこが落ちたのは最後の中村青司かなあ、やっぱり。あの一言で「…あっ…!」って感じでした。で、そのあと「……あぁなるほどぉ〜。でもこんな人だったっけかな、あの人」みたいなね(笑)。あと、驚いたというのとはちょっと違うけど、美鳥と美魚がすでに分離していたので犯人ではない、みたいな展開をするところは「ほほー」って感じで面白かった。

ところで、この話はやはり、うっかり一作目ですでに死亡として出してしまった青司の生き返り疑惑を持たせてみようって試みなんでしょうかね〜(笑)。でも、青司ってこんな人だったかなぁって気になって思わず十角館を再読しましたが(こんなまっとうな人じゃないよやっぱ(笑))、十角館における青司の状況は…ダリアの祝福があってもやはり「生きているかも」というのは無理っぽい…(笑)。

Posted by koko at 02:35 AM | Comment (0)
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