「BLUE BLOOD」歌詞雑感
2003.11.16(Sun)
タイトルどおり、歌詞を読んでみようかという試みです。もちろん、YOSHIKIの詞です。要は歌詞解釈なのですが…解釈するのは不遜な気もすれば申し訳ない気もするし、ついでにちゃんと解釈できている自信がカケラもない。というわけで、逃げを打って雑感。でもYOSHIKIの歌詞はもともとすごく構築されてるんで、不遜だー独りよがりだーと思いつつも、そうとう勝手な解釈を施しています。
反面、ファンの方にとっては「そんなの書くまでもないだろう」っていうようなことも多々書くと思います。でも、あくまでYOSHIKIに関して思ったことは保留なしですべて書くというのがこのサイトなので(笑)、当たり前のことだろうが間違っていようがとりあえず書いてみるつもりです。その辺ご了承のうえ、お読みください。
さて、アルバム「BLUE BLOOD」の歌詞ですが。YOSHIKI歌詞キーワードとも言うべき言葉たちがそろい始めたアルバムだと思います。「青」「薔薇」「記憶」「夢」「雨」など。世間的にはYOSHIKIの詞に注目が行くようになったのはやはりART OF LIFEからだったと思うので、歌詞という側面だとわりとスルーされてしまっているように見えますが、その後のYOSHIKIの詞を読む上でも、ここをスルーしてしまうと、YOSHIKI詞世界のベースを読み損ねることになりかねないんじゃないかなとか。
「PROLOGUE(〜WORLD ANTHEM)」
この曲自体はカバー曲ですが、YOSHIKIがつけた詞は重要だと思います。そして、やはり気になるのはここ。
Closeby,I see love trying to take a shape
As I reach out for it,
The love breaks up before my very eyes.
とても直接的に彼の傷が書かれています。彼の目の前で、手を伸ばして得ようとした愛が崩壊したわけですね。この事実がこのあとに続く歌詞のキーになっていきます。
ところで、私、頭に置かれている
All of the hate and all of the sadness
have melted away.
Nothing remains here.
これがよくわからないんです。このフレーズはENDLESS RAINを思い出させますが、あれは「Let me forget」
ですから、全然なくなってないですし。「The love breaks up」
の結果、「Nothing remains here」
ならわかるんだけどなぁ。この時点のYOSHIKIの中でhate
やsadness
が溶け去っているとは到底思えないんだけど。むー(とのっけから悩んで結論が出ていない。ここの意味がわかる方、ぜひ教えてください)。
「BLUE BLOOD」
とりあえず頭から読んでみます。「My face is covored with blood」〜「死にものぐるいで」
までは、主人公のとっても追いつめられた状況の説明です。で、「Then I see you standing there」
から「you(おまえ)」という存在が登場。まず、この「you」とはなんなのか?を考えてみたいと思います。
主人公はこの「you」から逃げています。しかもそうとう必死に。そして「you」に向かって、「Look out! I'm raving mad」
と叫んで拒否します。その理由は「you can't stop my sadness」
。つまり、主人公は悲しいのですね。悲しさのあまり「I'm raving mad」
なんです。「you」は主人公の悲しみを止めようとして近づいてきているようなのですが、主人公は「you」から逃げる…というシチュエーション。さて、ここでのポイントは「追いかけてくる幻覚」
です。つまり、これ、あくまで幻覚が追いかけてきているんですよね。とゆーことはこの「you」がそもそも幻覚だということになります。
涙に溶ける青い血を欲望に変えて
生まれ変わった姿を装ってみても
ここからはYOSHIKI詞炸裂と言った趣ですね。ここでの「涙」
は、Aメロ最後にあった「my sadness」
のことだと思います。「欲望」
はおそらくこの直前のフレーズ「I'll slice my face covered with blue blood」「Give me some more pain」「Give me the throes of death」
ではないかと。ひどく暴力的な衝動だと思います。もっと言うと暴力的な自傷の欲望ですよね。さらにAメロにある「追いつめられた快楽」
も同じものじゃないかな。つまり、悲しみを暴力的な衝動に変えて、狂気にとりつかれたような自分を装ってみても、というような感じ?
孤独に怯える心はいまも
過ぎ去った夢を求めさまよう
ここでのポイントはいまだ求めさまよっている「過ぎ去った夢」
です。Aメロでも「切り刻んだ夢は叫気に流れる」
という言葉が出てきます。これは同じ「夢」でしょう。では、この「夢」とはなにか? WORLD ANTHEMと繋がっていると考えてみると、彼を去った(彼が失った)ものとは「目前で壊れた愛」です。なので、「過ぎ去った夢」とは、失った愛のことかなと。
さらに推測を進めます。Aメロを思い出すと、「you」は幻覚でした。「you」は主人公の悲しみを止めようと近づいてくる(という幻覚を、彼が見る)人です。そして、彼はその幻覚の「you」を拒絶しますが、そのあとに置かれているフレーズが「切り刻んだ夢」
。つまり、この拒絶が「夢を切り刻む」行為なのではないかと。そういうわけでここでの「幻覚」と「夢」はイコールで結んでいいのではないでしょうか。ということは、夢とはおそらく、近づいてきてくれる「you」、彼を助けようとしてくれる「you」、彼を愛してくれる「you」…つまり「夢」=「愛されているという幻覚」です。そして、その愛されている幻覚は崩壊し、過ぎ去ってしまった。けれども、孤独に怯える主人公の心はまだ「you」の愛を求めてしまっている、と。
ちなみに「叫気」
ってのはYOSHIKIの造語ですが、その後Silent Jealousyで使われた「凶気」
と並べてみると、なんというか…「悲痛な狂気」なんでしょうね。悲しくて気が狂うというようなニュアンスなんだと思います。
次の段、「幻に変えて」
は多分なかったことにしてというニュアンスだと思います。「悲劇」
をなかったことにする、忘れたことにすると。「醒めた姿の舞台を演じてみても」
は「装ってみても」
と同じ状況でしょうか。あと、「you」の幻覚から醒めるってのも入っているかも。けれど、いくら「you」の幻覚を振り切ったふりをしてみても、結局は…
瞳に溢れる虚像はいまも
脱ぎ捨てた愛を鮮やかに写す
…わけですね。しかし、ここで虚像と言い切っているのはすごいですね。
「忘れられない〜装ってみても」
はいままでの詞の繰り返しになってます。言葉もここまで出てきた言葉に近いものが多いですね。そして、最後。
青い涙は悲劇に踊る孤独の
心をいまでも濡らし続ける
さて、この曲の中心と思われる「青い血」
「青い涙」
とはなにか、ですが…。まず「涙に溶ける青い血」
というのが中盤で出てきています。おそらく、青い血が溶けた涙だから「青い涙」
なのでしょうね。では、「青い血」
とは?
CDのブックレットにある文章では「現実には存在しない青い血・青い涙」
とあります。ま、その通り存在しないですけどね。なのでこれを「存在しない血」と読む方法もあります。ただ、個人的な印象なのですが…何年後かに出現するYOSHIKI語代表格の「青い薔薇」という言葉は確かに「存在しない」という意味を強く持っていると思うんです。でも、「青い薔薇」は、まず「青い血」があってそこから派生したものですよね。「青い血」を書いた段階でYOSHIKIがそれを強く意識していたかというのがちょっと疑問。逆なんじゃないかなーと思うんですよね。「青い血」という言葉を書いた→存在しない血とも読めた→「青い薔薇」=「存在しないもの」という意味になったっていう流れなんじゃないかなって。でもこれはあくまで個人的な印象であって、存在しない血という意味だけで読んでもおかしくはないと思います。もしも「存在しない血」という意味で読んだ場合は…えーと。つまり、「青い血」「青い涙」という言葉で、愛されていたという幻覚が崩壊して傷ついた主人公の悲しみ、その悲しみの存在そのものを否定しているわけですね。で、あるはずのない血、その血を溶かしたあるはずのない涙はいまだに彼の孤独の心で流れ続けている…という意味合いになりますかね。
で、もうひとつ私が考えたのは、YOSHIKIのインタビューであった「あるとき赤は青なんだと思った」っていう発言。「みんな赤というけど、自分には青に見える」という意味のことを言っていたことがありました(いつどこでのインタビューなのかは不明。調べればうちのどこかにはあると思うんですが(^^;;)。この発言から考えていくと、YOSHIKIは青い血を「存在している」ニュアンスで使っていることにならないでしょうか? 他の人には青い血は見えないかもしれないけれど、自分にとっては青い血がある…という感じ。そう読んでいくと、この歌詞は、他の人にとっては存在しない、自分にしかわからない青い血、青い涙は流れ続けている…って感じになります。この場合、孤独というニュアンスも強く出てきますね。彼の涙は他の人には見えないわけだから。
青い血・青い涙について一応書いてみましたが、結論は明確には出せません。でも「青い血」をどう読んでも、この曲が結局、彼がいまだに涙を流し続け、忘れられずに悲しんでいるという曲であることには変わりありません。
あと、蛇足ですが、もうひとつ。これはそうとうに恣意的な読み方ですけど…青というのは死の色でもあるかもしれません。でもこれはこのBLUE BLOOD時点では、そういう構想はないかも。DAHLIA頃になると明確に青=死という意味を持っている場合があると思うんだけどね〜。私が感じるYOSHIKI詞における「青」とは、悲哀、孤独、死、ってな印象です。(2003.11.12)